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ひと仕事終えたおかげで緊張の線が切れたか微妙に体調が悪い日が続いております…うう…すみません。
治り次第更新します…せっかくの夏休み…


 

飛雄馬は布団の中で一度寝返りを打ってから、しまった!と全身に冷や汗をかきながら体を跳ね起こすと、ベッドの枕元に置かれていた時計を掴むなり、それを手元に引き寄せた。
短針は間もなく9の位置を指そうとしており、長針もまた12に届こうかとしている。
完全に遅刻だ。
しまった、ねえちゃん、どうして起こしてくれなかったんだ──と飛雄馬は上体を起こした格好で頭を抱えたが、今日が試合の組まれていないオフ日であったことに気が付くと、ホッと胸を撫で下ろした。
9時か、間もなく伴が訪ねてくるなと飛雄馬は時計を元の位置に戻すとベッドから床へと降り立つ。
今日はねえちゃんも人手が足りないとかで朝からアルバイトに出かけているんだっけ。
何もかもが物珍しくて新鮮で楽しいと話すねえちゃんはいきいきと、はつらつとしていてこちらも元気を貰えるな、と飛雄馬は洗面所で歯を磨き、顔を洗うと、台所にてあらかじめ明子が作ってくれていた味噌汁入りの鍋を火にかけた。
着替えは、ねえちゃんもいないし食べてからでいいか。人の目がないと段々物臭になっていく自分がいてよくないな、と飛雄馬は沸騰する寸前で火を止めると椀に味噌汁を注ぎ入れ、炊飯器から茶碗に飯をよそう。
毎日、毎日中身の違う味噌汁。
やはりこの味が、いちばん舌に馴染む。
洋食をあまり好まなかったとうちゃんから離れたことで、食卓にも洋風の料理が並ぶようになり、ねえちゃんの勉強熱心さには驚いたものだ。
飛雄馬はソファーの置かれたリビングのテレビの前、そのテーブルに着くなり床に腰を下ろし、味噌汁を一口、啜ると炊いてから少し時間の経った白米を口に運んだ。
たまのオフ日くらい、ねえちゃんに楽してもらえるよう、おれも何かしら手伝わなければなと飛雄馬は椀の中の程よく煮え、仄かな甘みさえ感じる野菜の品々を箸で口元に持っていく。
今日の夕飯は何をすると言っていたっけ。
変に冷蔵庫の中を引っ掻き回しては迷惑になるだろうから、ねえちゃんが帰ってからおれが支度をするよと言うことにしよう。
それにしても、ひとりだとこの部屋は広すぎる。
ファミリー向けのマンションを契約したのだから当たり前と言えばそうなのだが、姉弟ふたりでも正直持て余してしまう。
ねえちゃんのおかげで毎日ゴミ一つない綺麗な状態を保てているが、おれひとりならばたちまち部屋じゅうにゴミが溢れてしまうだろう。
ねえちゃんは、もしかしておれの世話をするのが嫌で働きに出たのではないか。
ある程度の年齢を迎えて、身の回りのことが自分では何ひとつ出来ないなんて甘えている、と暗にねえちゃんはそう言いたいんだろうか。
「…………」
飛雄馬は味噌汁を啜り、白米を頬張る。
あっという間に一杯ずつを平らげ、飛雄馬はシンクへと使用した食器を一式置くと椀と茶碗とに少量、水を溜めた。
すると、玄関先で来客があったか扉へのノックがあり、飛雄馬は返事をしつつそちらへと向かう。
「おう、おはようよう。星」
「伴……」
扉を開けると顔を覗かせたのは、昨日のうちからクラウンマンションを訪ねる予定となっていた伴宙太であり、飛雄馬は上がれよ、と彼を室内へと誘った。 
「いつまでパジャマ姿でおるんじゃい。まったく子供みたいじゃのう」
「ああ、そろそろ着替えようと思っていた。昼からの予定は?」
飛雄馬はは今まで自分が着き、食事を摂っていたテーブルの向かい、ソファーに彼を案内し、ちょっと着替えてくると自室に引っ込んだ。
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